ご当地パンの旅!
旅行に行く前に、まず行きたいレストランとカフェを決めて、その周辺の名所を巡るプランを立てる。しかし最近、旅の動線が少し複雑になった。パン屋が追加されたからだ。パンが好きなわけでもないのに、つい、はやりに乗ってしまう性分なのだ。
数年前、全州(チョンジュ)へ旅行に行ったときの話。朝、コーヒーを買いに行った夫が、戸惑い顔で戻ってきた。「みんな茶色の紙袋を持ち歩いているんだけど、あれはなんだ?」 まさか知らなかったなんて。「豊年(プンニョン)製菓の手作りチョコパイに決まってるでしょ」 夫が少し悲しそうな顔で聞いた。「買いに行く?」 聞いてあきれた。「甘いもの、食べないよね」 そう、私たち夫婦は甘いものを食べない。今年、群山(クンサン)に行った。夫は浮かれた表情をしている。「みんな持って歩いてるね」 私たちも持ち歩いていた黄色い紙袋の中身は、李盛堂(イソンダン)のあんパンと野菜パン。そうだ、なぜだかわからないけれど、買ってしまったのだ。なんだか自分らしくない。
いつからか、韓国人にとって、ご当地パン屋が国内旅行の必須コースになった。ただでさえ貴重な旅先での時間を、パン屋の前に並んで過ごすなんて。求礼(クレ)に行くと、新しめのパン屋で全粒粉のパンを買い、木浦(モッポ)に行けば、老舗のパン屋でエビバゲットを買う。礼山(イェサン)に行く前には、ネットの口コミをとことん調べ、店ごとのアップルパイの味と特徴を比較してから現地に足を運ぶ。大田(テジョン)に行くなら、心を鬼にしなくてはいけない。出来たてがおいしい揚げそぼろパンとサンドイッチ、冷凍でもおいしい生クリームケーキとモンブランをどれぐらいの割合で買えばいいのか。悩みは深い。
最初からこうだったわけではない。一時期、地方には今にも潰れそうなパン屋しかなく、特産品と呼ばれるパンの味も大して変わらなかった。栗やら桜やら桃やら、パンの形はいろいろなのに、中に入っているのは、あんこだけ。これって、ただのあんパンでしょ。花の形は関係なくない? そんなある日、莞島(ワンド)でアワビパンを発見した。パンの中に、アワビがひとつ丸ごと入っている。見た目は微妙だけど、味はいける!それ以来、不信感をほっぽりだして、片っ端からパンを買うようになった。ビビンバが有名な全州ではビビンパン、ちゃんぽんが有名な江陵(カンヌン)ではちゃんぽんパン、長ネギが有名な珍島(チンド)では長ネギパン。
この前江陵に行ったときには、インジョルミ(きな粉餅)クリームパンをしこたま買った。もともときな粉餅も食べないし、クリームパンも食べないのに、どうしてこうなったのだろう。ふむ、そこでしか食べられないから?たまたま並んでいる人がいないパン屋を素通りするのが悔しいから?とにかく、大好物ではないとしてもおいしいのだ。韓国のパンは海外でもかなり有名らしい。特に、クァベギ(ねじり揚げドーナツ)ときたら!韓国のクァベギは、甘いものが苦手な人が食べても、おいしい。
Translator: Culture Flipper Japanese Team
Original Content in Korean: cultureflipper.com/blog/got-bread-will-travel-ko
English Translation: cultureflipper.com/blog/got-bread-will-travel-en
11.29.2023